短歌バトル2017本戦歌まとめ
各短歌会がTwitterに流していたものをまとめました。
「第3回大学短歌バトル2017――学生 短歌会対抗 超歌合」での本戦歌です。
ダッシュの部分は作者不明・未公開です。
外大短歌会
淫乱の神に夜空へ放たれて恵みのようにししゃも降るなり/ 中山かれん
あざやかに花の名前を掠めとり君は世界を原始にかえす/ 神谷俊太郎
懐かしい夢からさめる感触は燐寸の消える一瞬に似て/北島洋
昏がりに鈍くブーツの音はあり革命前夜春しびれゆく / 神谷俊太郎
羽がふわふわと舞い落ちてローソンの李さんと一緒に寄り目をつく る / 中山かれん
お客さんの手渡す小銭が冷たくてきっと歩いて来たんだろうな / 北島洋
「色白も歓迎」の日サロバイトにはタヨーセイ要員のまみこ / 中山かれん
流氷が来るのと言って海へ行くあなたを送る春の最中に / 北島洋
極北の都市の名前を呟けば舳先はそっと大陸を指す / 神谷俊太郎
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全人類の母になりたい欲望を殺して晩のししゃもを運ぶ/桜望子
ひとりきり菜の花畑に寝転んだ名前にくさかんむりが欲しくて/ 乾遥香
アイドルがセックスしても夢は夢 目覚めたら東京も朝だよ/佐藤まどか
一日中履いてたブーツ脱ぎ捨てれば足が地球に触れててこわい/ 乾遥香
唇ぶつけて「へたくそ」って泣いて君と一緒に切羽詰まりたい/佐藤まどか
砂浜で拾う銭貝渦の中あなたをみつけてあなたをください/桜望子
絵日記の終わりみたいな日の午後だ ふたりで閉じた朝顔数え/桜望子
でいいって言われて歪む遊歩道聞き流せないことが増えてく/ 乾遥香
ユーラシア大陸一の幸せをちょうだい、あれだよ星形のピノ/佐藤まどか
聖母マリアになりたくて処女になる十五の夏のブログを消して/佐藤まどか
信じきれなかった神さま許してよ聖書の代わりに太宰を開く/桜望子
大阪大学短歌会
焼きししゃも食む警備員 本日の夜間外来は銀のしずけさ/佐原キオ
「前職は手品師でして」渡すとき名刺を一度裏返す癖/あかみ
淫夢見ぬ夢精の感覚のこしつつ遅れてはじまる校長訓話/渡邉瑛介
昨晩の靴用カイロがあたたかいままのブーツで踏みつける柚子/ あかみ
カラス飛ぶとき抜け落ちる羽ペンの軌跡が描く都市の輪郭/ 渡邉瑛介
わが体暴かれるとき銭湯のロッカーキーは光を湛う/佐原キオ
まっさらな貸出カードを秘めたまま日に焼けていく文学全集/ あかみ
科学者の臓器は貨物室のなか その熱攫ってゆけ乱流よ/渡邉瑛介
延々と忘れられなきオニユリは母の朱硯の陸のよそおい/ 佐原キオ(ルビ 陸:おか)
本棚に新約聖書持つひとの故郷とおくて蝋燭の火に/あかみ
しめやかに高音域を響かせて夜の聖歌はそれだけで雪/佐原キオ
神戸大学短歌会
あの川辺で手を繋いだはずだったししゃもが回遊してくる秋に/ むらかれん
東名阪、と誰かが言えばそれぞれの透明人間包囲されたし/ 九条しょーこ
教室の壁に人数分の夢クリオネたちが半紙に眠る/村上なぎ
キリンだったわたしの前世この痣は柄の名残でブーツは蹄/ むらかれん
その愚痴を思う存分聞かされて返事の途切れた手羽先かじる/ 九条しょーこ
駅前のティッシュ配りの給料が投げ銭制でちょっと心配/村上なぎ
鍵忘れ記憶ちぐはぐそんな日に大きなラムネをむさぼる、ぐふふ/ むらかれん
ただ歳をとりたいざらついた傘を流れるように鎖骨に触れる/ 九条しょーこ
神さまはいつもみている山派だと即答すれば来世は陸橋/村上なぎ
聖飢魔Ⅱがお腹いっぱいになるように教会が配っている肉じゃが/ むらかれん
カップラーメンの上に聖書を載せておくといいことあるよ ゲルニカになろう/村上なぎ
イノセンスを強いられ頷く聖職者と呼ばれし我の薄暗き部屋/ 九条しょーこ
北海道大学短歌会
朝に焼くししゃもの焦げた部分から崩れて今日が始まっていく/ 渡邉暉生
ファミレスで君の名前を記入する 君の名前で僕が呼ばれる/西村優紀
夏風邪に半びらかれるくちびるのすこしうかつな夢魔だねきみは/ 岐阜亮司
いつまでもブーツのことを長靴と言う父の背に小さな会釈/ 渡邉暉生
くもらせた眼鏡に一瞬だけ羽根が見えるすべてのものうつくしい/ 岐阜亮司
小銭入れがうるさい死ねと好きな子に言った三七度の廊下/ 西村優紀
通販の番組だけを一日中見る あざやかな終わりが欲しい/西村優紀
スピッツのチェリーをずっときいているあなた 流行りがわからなくなる/渡邉暉生
離陸するみたいなはやさ うしなつてしまつたひとばかりを好きになる/岐阜亮司
あなたが消滅してもあなたの記録たち残つてちやちな聖句みたいだ /岐阜亮司
犬みたくあなたに髪をぐしゃぐしゃにされる 聖火の灯る電球/西村優紀
雪虫がいなくても降る 粉雪は聖なる夜にしんしんと降る/渡邉暉生
九州大学短歌会
腹裂けて子持ちししゃもの子は溢れ動機未満の瞬間がくる/ 松本里佳子
本当のことはいつも分からないきみの名前に雨とあること/ 菊竹胡乃美
「おまえらの夢根こそぎ喰ふ!」胸に飼いならせない獏(バク) をかえしに 森へ/真崎愛
明日のためブーツに入れる五円玉フリーキックの選手の気持ち/ 菊竹胡乃美
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どいつもこいつも流れるように付き合いだす特急電車が止まらない 駅/菊竹胡乃美
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はぁ誰かチューしてくれ俺の尻に聖なる尻にチューしてくれ/ 菊竹胡乃美
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早稲田短歌会
信じれば叶うと聞いて給食のししゃもをしっぽからかじり続けた/ 関根一華
先輩の恋人の名前当てゲーム 正解にたどり着かず三月/大村咲希
この朝に死んでいたかもしれないね夢精したのも覚えてないし/ 谷村行海
元カノと抱き合うようにあと何度ブーツの紐を結ぶのだろう/ 谷村行海
羽根のある生き物たちに懐かれて暖かさもろとも逃げてほしい/ 関根一華
西陽なら入る病室 銭ゲバの父を言祝ぐ歌を歌った/大村咲希
何もない町で君とか好きだった 日焼けの跡がついては消えた/大村咲希
もう川の流れのようには生きられず血圧ばかり気になる目覚め/ 谷村行海
三叉路の行かない方に伸びる影 もう暗くなるし陸路で帰る/関根一華
腐る記憶、雨のグラウンドも教科書に抜粋された高野聖も/ 関根一華
教室で聖書を輪読した午後よ 捧げたり突き放したりした/大村咲希
聖欲がおさまらなくて昨日から祖父の位牌を食い尽くしたい/ 谷村行海
岡山大学短歌会
崩しても崩してもいのち箸先が死んだシシャモの腹をまさぐる/ 山田成海
羽をひとつ与へるやうに卒業のすべての子に配つてゐる名札/ 川上まなみ
私の投げる夢のかけらに白鳥がゆっくり集う音のない午後/ 森永理恵
旅先にスノーブーツを購へり夜の間に降る雪のため/川上まなみ
大企業に行く友人が手羽先に胡椒をかける ずっと上手に/森永理恵
銭湯のシャワーを浴びる友人の背中に来るべき結婚式/山田成海
祖父の死を知るよしもなく庭はあり鳩は何度も日を改める/ 森永理恵
水面に光はすんと佇んで川は流れを止めないでゐる/川上まなみ
きみの立つ陸地をふやすための逢瀬 シンクに新たな洗剤を置く/山田成海
聖五月讃へる歌よ母親に一人分なる丸き膨らみ/川上まなみ
「ご迷惑おかけします」が点滅しカラーコーンの聖域がある/ 森永理恵
どう考えてもきみは聖人走り書きされたさよならさえ美しい/ 山田成海