「かばん」四月号を読む

歌人集団「かばん」に所属してもうすぐ半年が経ちます。

なのにろくに歌も出せてないし本誌も読めてないというこの体たらく。

とりあえず一巡読むくらいはしていきたいです。がんばります。

東京でやっている歌会にもいつか参加してみたいな。

勝手に引用したので、引用しないでほしい人や、誤字などありましたらおしえてください。

毎号やりたいです。

 

 

好きだった歌引用

 

長い筆談にポケットは作り話で満たされドトールの冬(河野瑤/「偽・告白録」)

 

あたらしいねこにはすでに名があってただなじませてゆく手のかたち(東こころ/歯ぐき)

 

はじめからすぐ壊れると承知して百円店で買う羅針盤(漕戸もり/「紙の魚」)

 

満月は六つ?ときかれ六つだと答えるそれがあなたの世界(藤本玲未/「ボーナストラック」)

 

花も風もすべておまへよふりさけてひとりかゆかむ春のあけぼの(佐藤元紀/「閑適」)

 

四隅からだんだん季節奪われて古い写真の君のうつろい(若草のみち/「四隅」)

 

ふらふらと肩を貸しあいへろへろと千鳥を踏めば土星が輪っか(福島直広/「土星が輪っか」)

 

真夜中の図書館にいるこの俺はしんでいるんだやっとわかった(柳本々々/「本のお供え」)

 

見てごらんあんなに遠くの信号が今青だからもう間に合わないよ(戸田響子/「平和の園」)

 

攻撃は最大の防御のようにせつなさは最大のあいにく(杉世和科/「第一印象」)

 

君は魚 骨の形の美しい 歓びの字にほらここ似てる(都築つみ木/「僕vs君vs絶対」)

 

 

五首選

ニッポンのかたちになって寝るぼくを守ってくれるひとなどいない(飯島章友/「まひるまの魔球」)

 ニッポンのかたちになって眠ることはそんなに難しくない。北海道とか頭っぽいし。ニッポンめいて眠ることは、大きな存在になったようで誇らしいのかと思いきや、「守ってくれるひとなどいない」という結句に落ち着く。ニッポンは島国で、ぽつんと浮かんでいる様子が急に思い起こされて、印象的な歌だ。

 

 

雨の雨の雨の降る日の雨だれの青いワイシャツを着るのをやめる(石黒サトシ/「青」)

 雨のリフレインがすごい。the brilliant greenの楽曲「愛の♥愛の星」を思い出す。愛も雨も数えられない名詞なのに、それが重ねられると、周りをすべて取り囲まれていくような気がする。雨といういちめんの青に囲まれて、青いワイシャツを着るのをやめたひとは、きっと雨の中で目立っただろうな。情景がきれい。

 

小さいころ何回か見た風景がいつかはわたしをあるじにするの(柳谷あゆみ/「春休み」)

 「いつかわたしをあるじにする」という表現に驚く。「あるじにするの」の最後の「の」が、強い意志というか、絶対にそうなるという確信のようなものを含んでいるようで、パワーに圧倒されてしまう。歌の意味は取れなかったけれど、なにか大きな情熱のある歌。

 

持ち物を全部ピンクでそろえたらちょっとテンション上がってきたぞ(斎藤見咲子/「ハッピーライフ」)

 持ち物を全部ピンクでそろえる、ってヤバくないですか。雑誌とかで、ピンクコーデとかブルーコーデみたいなのありますけれど、ほんとうにそれ一色で生きていくってかなりの覚悟がいる。服ではなく持ち物っていうことは、継続的なコーディネートだし。この歌は<持ち物をピンクでそろえたら楽しいだろうな>→<持ち物をピンクでそろえたぞ!>→<テンション上がってきたぞ!>という流れがあるように思う。終始ハイテンションで、それで自分をしあわせにできているのだからすごい。

 

一羽ずつ日記代わりに折り上げた中でひときわ傾いた鶴(島坂準一/「一羽」)

 「日記代わりに」ということは、毎日一羽折っているのだと思う。色を変えたり、二羽つながっているやつにしたり、足がついてるのにしたり……とバリエーション豊かにしていったのかもしれないし、千羽鶴のように同じものをたくさん折ったのかもしれない。(歌の雰囲気的に後者っぽいなと思う) 毎日繰り返す中で、同じもののようだった折鶴にもかすかな差があることに気付く。この鶴は頷いているよう、この鶴は翼がへしゃげてる、というように。その中に「ひときわ傾いた鶴」がいたのだ。細かい観察がきれいな歌だ。

 

以上です。